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「民泊禁止」規約明文化だけで大丈夫?

 築25年・100戸のマンションです。近年、外部所有者が増え、賃貸住戸が30%を超えるようになりました。さらに政府がいわゆる民泊サービスを勧めていることから、管理組合に無断で民泊をはじめる住戸が出てくるのか不安に思っています。
そこで当マンションでも民泊サービスの禁止を管理規約に盛り込みたいのですが、規約に「民泊禁止」を明文化しただけで防止できるものでしょうか?

「民泊禁止」規約明文化だけで大丈夫?へ5件のフィードバックがあります。

  1. <マンション標準管理規約>
    第12条2項に追加する条文案(NPO浜管ネット作成)
    2 区分所有者は、自らの専有部分を使用し、有料の休憩・宿泊施設(対価を得て、専有部分の全部又は一部を休憩所又は宿泊施設として使用させるもの)として使用すること、及び住宅宿泊事業法に規定する届出を行って住宅宿泊事業を営んではならない
    (※住宅宿泊事業法が成立し、施行されることが前提)

    規約の実行性を確保するための使用細則案(NPO浜管ネット作成)
    1 理事長は、特定の専有部分について、規約第12条第2項の規定に反する行為が行われていると疑われているときは、区分所有者等に対し、いつでも専有部分の利用状況につき、口頭又は文書で照会することができる
    2 前項の照会の結果、又は他の区分所有者及び専有部分に出入りする者等から任意に聴取した結果、規約第12条第2項に違反していると認められる場合、理事長は、区分所有者に対し、利用状況を調査するため当該専有部分への立ち入りを求めることができる
    3 前項の場合において、当該専有部分の区分所有者等は、理事長の求めを正当な理由なく拒んではならない

  2. <住宅宿泊事業法案>
    第六章罰則
    第七十二条
    次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する
    一 第二十二条第一項の規定に違反して、住宅宿泊管理業を営んだ者
    (以下略)

    第二十二条
    一 住宅宿泊管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない

  3. <民泊禁止には万全な規約で対抗/「ヤミ民泊」には罰則規定の周知も>
     
     政府は2017年3月10日「住宅宿泊事業法案」を閣議決定しました。民泊サービスの提供に関して一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図ることが目的とされています。
     住宅宿泊事業法は、住宅宿泊事業を営もうとする際の届出、住宅宿泊管理業や仲介業の登録制等を定めたものです。
    基本的に「民泊サービスの普及」が大前提にあります。ですから、住宅宿泊事業法が制定されたとしても、管理規約に禁止を定めていたというだけ宿泊事業の届出は受理されないと言えるか、というと現時点での判断は難しいと言わざるとえません。
     京都市のように条例で「規約で禁止している場合には宿泊事業を制限する」としているケースもあるが、どの自治体でも条例で民泊を規制するとは考えられません。
    とはいえ、やはりマンションでの民泊禁止のよりどころは管理規約です。マンション標準管理規約第12条(専有部分の用途)では、「区分所有者は、その専有部分を専ら(もっぱら)住宅として使用するものとし、他の用途に使用してはならない」とありますが、この規定では民泊禁止は難しいでしょう。住宅宿泊事業法が「住宅」を利用して行う宿泊形態を述べているからです。
     このように民泊禁止には万全な管理規約等で対抗するしかないでしょう。
    問題は、管理の行き届いていないところで行われる「ヤミ民泊」です。ペット飼育マンションにおいても10%~15%が隠れて(堂々と?)飼っている住民がいると言われています。
     そしてペット飼育者の要求や社会情勢などにより、飼育禁止→1代限り可→飼育可と規約変更を行うケースはどんどん増えています。
    集合住宅に住むものにとってルールを守らない住民は集合住宅に住む資格がないのではないかと思いますが、現実はそうもいきません。
     住宅宿泊事業法案に罰則規定があります。法案の施行を視野に、こうした罰則もあることの周知も細則作成時に検討しておくとよいかもしれません。

  4. <全管連が国交省に要望/民泊禁止マンションに営業許可出さないで>
    NPO全国マンション管理組合連合会(全管連、川上湛永会長)は2017年5月2日、国土交通省・由木文彦住宅局長あてに、マンションにおける「民泊問題」に関する要望を提出した。
    要望の内容は下記のとおり。
    1.民泊を禁止しているマンションについては、営業許可を出さないことを徹底していただきたい
    2.民泊禁止等を理事会決議、もしくは総会等で、管理規約で明確化することに取り組む管理組合への支援をおねがいしたい
    3.「違法民泊」等の1本化された通報窓口の開設をおねがいしたい
    管理規約に「民泊禁止」を明文化し、マンションのエントランス等に数カ国語で「民泊禁止」の看板やチラシを掲示している管理組合もあります。しかし、それでも「違法民泊」はあとを絶たないようです。
    また住宅宿泊事業法(民泊新法)が閣議決定され、成立されることからも、民泊を禁止する管理組合への理解を関係省庁に働きかけてもらうよう、国土交通省に強く要望しています。

  5.  多くのマンションは規約に「専(もっぱ)ら住宅として使用する」との趣旨を規定している。ところが政府は、この規定のもとでも一定の範囲ならいわゆる「民泊」が可能だとして、経済特区制度を適用して解禁し、さらには全国的にもこれを可能にするために、強引に新しい法律を制定しようとしている。
     この問題をマンション居住者と管理組合の立場から考えてみたい。
    規約で「専ら住宅として使用する」の規定を持つ管理組合でも、営業活動や事務所としての使用は一切禁止のところから、週1回程度の生花教室や書道教室程度なら理事会で許可されるところ、禁止規定はあるが違反があっても取り締まっていないところなど、対応は必ずしも一様ではない。
     住宅使用の中でも、持ち主が会社であれば寮になり、それも家族寮ならともかく、独身寮となれば、騒音などが発生しトラブルになっているところもある。
     これらに比し、「民泊」は、住居としての使用とは言い難い上、騒音やごみ処理などのトラブルは格段に多く生じている。そもそもいわゆる「民泊」は、ホームステイなどと違って、通常当該の住宅所有者も賃借人もいない状態で第三者に使用させるわけだから、前記の各種の利用と比べてもはるかに他の居住者に対する迷惑の度合いは高い上、短時日の滞在だから管理や注意も行き届きにくい。
     それを関係当局が「住宅としての利用のうち」に含めようというのは、まさに宿泊施設不足対策という一つの目的だけに合わせたご都合主義というべきで、他の住民に迷惑がかかることを一顧だにせず、国民生活に配慮する姿勢に欠けた、不当な解釈に他ならない。
     したがって国交省は、「民泊」規制には新たな規約が必要だなどという態度ではなく、規約で「住宅専用」あるいはそれと同種の規定を持つ管理組合では「民泊」はできない旨を明確にすべきである。
     もちろん新たな規約を制定すればいっそう確実に「民泊」を排除することができることは確かだが、国交省が現在示している規約案では抜け道が多く、実効性に乏しいことも指摘しておかなければならない。
    (NPO日住協論説委員会)NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2017年3月5日付第414号「論談」より

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