管理組合役員、修繕委員のお悩みにAI先生と全建センターの各分野のスタッフが回答します。

拡大する認知症問題について

平成28年、65歳以上は約3,461万人(人口比27.3%)。平成33年には3人に1人が65歳以上になると言われています。高齢化による認知症問題は今後広がっていき、10年後、20年後にはもっと拡大していることでしょう。
認知症と思われるマンション住民に対して、本人に親族がいる場合は、まず親族に連絡して、対処を依頼する方法が最初の対応として多く取られていますが、単身で親族がいない、もしくは親族の連絡先がわからないことも多く、手詰まりとなるケースがあります。
また、親族に連絡がついたとしても対処に非協力であることも多いようです。
介護の専門職によると、ある程度症状が進行し、認知症に伴う困った行動が見られるようになっても、適切に介護の専門職につなぐことによって症状が安定し、困った行動が落ち着く場合も少なくないといいます。
問題となるのは、孤立した認知症高齢者です。拡大する認知症問題について広くご意見を求めます。

拡大する認知症問題についてへ6件のフィードバックがあります。

  1. <認知症高齢者の対応はだれがするか>

    マンションではこうした認知症高齢者への対応はだれが行うのか。自治体か、自治会か、管理組合か、管理会社か、民間事業者か―。
    認知症高齢者を第一に考え、認知高齢者に悪影響を与えないよう、見守りシステムを基盤とした地域支援といった考え方は当然、自治体から民間事業者まで多数の地域社会の対応が肝心になります。
    しかし、少なくとも管理費等の滞納のほか、区分所有法による共同の利益に反するような行動(暴言を吐きながら徘徊したり、ゴミ屋敷化など)がある場合は、当事者である管理組合が解決しなければならない問題となります。
    管理会社に頼ったところで、「認知症高齢者への対応にフロントマンや管理員等の現場職員がかかりきりになると、現場の業務にかなり支障が出てくる」という回答が返ってくると想定されます。
    マンションにおいてはどのような対策が今後必要になるのか、将来的な課題といえそうです。

  2. <成年後見制度について>

    大きなトラブルになる前に、情報として共有しておきたいのが「成年後見制度」があります。
    成年後見制度には「法定後見」「任意後見」の2種類があります。「法定後見」は認知症や知的障害など判断能力が不十分またはまったくない人が対象で親族か、親族がいない場合は市町村長などが裁判所に申し立てをします。
    一方、「任意後見」は判断力があるうちに自分で後見人と契約することで、まだなじみにくい状況にあるようです。

    <成年後見制度で受けられるサービス>
    「財産管理」
    不動産などの管理・保存・処分
    金融機関との取引
    年金や不動産の賃料など定期的な収入の管理やローン返済、家賃の支払い、税金、社会保険、公共料金などの支払い
    生活費の送金や日用品の買い物
    生命保険の加入、保険料の支払い、保険金の受け取り
    権利証や通帳などの保管
    遺産相続などの協議、手続きなど
    「身上監護」
    本人の住まいの契約締結・費用の支払い
    健康診断などの受診・治療・入院費用の支払いなど
    医師から病気やケガなどの説明に同席する
    介護保険などの利用手続き
    リハビリテーションなどに関する契約締結、費用の支払い
    老人ホームなど施設の入退所、介護サービスなどの情報収集、本人との話し合い、費用の支払いなど
    介護サービスや施設のチェック、異議申し立てなど
    ※後見人は、賃貸借契約の保証人、入院などの保証人、手術の同意などはできないとされています。毎日の買い物、掃除、食事の準備、身体介護なども行いません。

    利用できる制度は何があるのか、その内容はどのようなものなのか。まずは情報の収集からはじめることが肝心だと考えられます。自治会が対応するのか、管理組合がやるのかではなく、住民同士の共通の課題として捉えていく必要があるでしょう。

  3.  一般社団法人日本マンション学会は4月22~23日、名古屋市千種区の椙山女学園大学・星が丘キャンパスで名古屋大会(第26回)を開催しました。
    今大会のメインシンポジウムは「マンションにおいて認知症とどう付き合うのか」をテーマに開催。その他「マンションにおける人の高齢化への取り組み事例」「最近のマンション紛争と裁判」「マンションと費用負担から考察する」など7つの分科会報告を行いました。

    <管理会社からみた現状と課題、その対応マンション管理業協会>

     マンションでの認知症高齢化問題は、他のマンション居住者の日常生活に悪い影響を及ぼすことでトラブルになったものを指す場合が多いといえます。
     たとえば、マンション内を徘徊して他の部屋のドアを叩いたり、ドアチャイムを押して回ったりといった行動です。
     いわゆるゴミ屋敷化や階上からの物の投棄といったような問題も認知症状が関連しているケースもあります。
     本人に親族がいる場合は、まず親族に連絡して、対処を依頼する方法が最初の対応として多く取られていますが、単身で親族がいない、もしくは親族の連絡先がわからないことも多く、手詰まりとなるケースがあります。
     また、親族に連絡がついたとしても対処に非協力であることも多いようです。
     介護の専門職によると、ある程度症状が進行し、認知症に伴う困った行動が見られるようになっても、適切に介護の専門職につなぐことによって症状が安定し、困った行動が落ち着く場合も少なくないといいます。

  4. <マンション管理業協会実態調査>

    調査対象:産業政策委員会社(16社)
    調査期間:平成27年11月~平成28年1月
    調査方法:アンケート。自由回答で認知症の問題がある場合はヒアリングも実施
    回答数:93事例

    ①(75歳・男性・築40年・50戸規模)
    ・漏水が発生。部屋に入ったところ、トイレに汚物が山のように積み上がっていた。
    ・管理費等の滞納なし。部屋には同居人がいた。
    ・買い物姿からはわからず、民生委員も未把握。
    ⇒民生委員等へ相談。施設への措置的な収容に至ったが、1カ月以上要した。
    ⇒漏水被害の復旧工事に保険は使えず、被害者が復旧を負担した。

    ②(80歳・女性・築20年団地型マンション)
    ・ガスコンロに火をつけ、その上に電気炊飯器を乗せ、火災が発生。幸いにボヤで済んだが、煙が部屋内だけでなく、共用廊下にもうもうと立ち込めた。

    ③(75歳・女性・築30年・100戸規模)
    ・部屋内がゴミ屋敷。異臭に加えて、ゴキブリやハエが発生し、近隣住戸へ迷惑をかける。

    ④(80歳・女性・築20年・50戸規模)
    ・「隣の住民が、自分が留守の間に部屋に入り、物を盗んだ」として、何度も連絡をしてくる。

    実態調査結果の分類(93事例)
    〇興奮・暴言・暴力・・・・17件
    〇理解・判断力の低下・・・16件
    〇見当識の障害・・・・・・14件
    〇幻覚・妄想・・・・・・・10件
    〇徘徊・・・・・・・・・・9件
    〇実行機能障害・・・・・・9件
    〇記憶障害・・・・・・・・8件
    〇物取られ妄想・・・・・・8件
    〇不潔行為・・・・・・・・4件
    (文)
     認知症は時間をかけてゆっくり症状が進むと言われています。認知症が考えられるような症状が出始めた初期の段階で発見し、スムーズに医療や介護の専門職につなげる「早期発見・早期対処」が最も重要とされています。
    マンションにおいても同様であることがさまざまなケースから当てはまるといえるでしょう。
    認知症高齢者への対応に管理員等の現場職員がかかりきりになると、現場の業務にかなり支障が出てくることが想定されます。
    管理組合運営に深刻な影響を及ぼすことも考えられ、マンションにおいてはどのような対策が今後必要になるのか、将来的な課題といえそうです。

  5. <高齢化問題と管理会社の取り組み/ナイスコミュニティー>

     マンションは住生活の拠点であり、管理会社はその生活を支える一番近い存在です。設立40年超のナイスコミュニティー㈱では、共用部分の管理を主として全戸に平等にサービスを提供する立場と、高齢者など私生活にまで入り込んで行うサービスの両立を模索しているとしています。その中から、これまで取り組んできた高齢化問題の事例の報告がありました。
    ◆孤独死
    ①(71歳女性)
     管理員から新聞がたまっており、最近居住者を見かけないという連絡あり。居住者名簿、警察、区役所、民生委員、地域包括支援センター、3年前購入時の仲介業者などに照会するが親族等の情報なし。
     単なる不在だった場合も考え、強制解錠を躊躇したが、関係者との協議の上、警察官2人、副理事長の立ち会いのもと、弊社2人にて窓の面格子を外し、警察官が入室。遺体を発見した。
    ◆認知症
    ①(転倒などのけが)
     区分所有者と同居の母親(高齢・認知症あり)がマンション近くの歩道で転倒し、左眉あたりにけがをした。
     管理員が救急車で病院へ搬送しようとしたところ、認知症を患っている、自宅の鍵を持っていないとの理由で病院の受け入れ先が見つからず、救急車でマンションへ戻された。
    家族と連絡が取れたら近場の病院で見てもらえるとのこと。けがは幸い軽症ですぐ入院するという状態ではないことを確認した。
    ②(徘徊)
     マンションエントランスで座り込んでいる高齢女性を見かけることが多々あり。オートロックの鍵をもたずに外出しているケースもあった。早朝6時前から「デイザービスの迎えが来ない」などと、マンション裏をフラフラ歩いていたりする。
    別のフロアでドアを叩きながら「開けろ!」と暴れていたという報告もあり。
    管理会社から不在区分所有者の親族に連絡し、対応してもらった。
    ③(高齢者狙いの詐欺)
     築45年・5棟・130戸の団地型マンション。
    複数の居住者から管理会社を名乗る者の訪問があり、「このマンションは耐震性に不安がある。修繕費もこのままでは足りないのでマンションを売ってほしい」と言われたという連絡あり。
     また、高齢の不在区分所有者の部屋で引越し作業が行われているので、その理由を聞いたところ、「マンションで耐震補強工事を予定しているので、1世帯750万円支払うよう指示された。払えないならマンションを売ってほしいと言われた」とのこと。
    当マンションでは耐震補強の予定なし。
     人物の特定はできなかったが、管理会社を名乗る怪しい業者が訪問しているとの注意喚起書面を全戸に配布。各棟役員・管理会社フロント担当同伴で全戸訪問を実施した。

     今度も高齢者の1人での外出や、1人暮らしによる事件や専有部分内における漏水・火災といった事故が増えていくと考えられます。
    管理会社だけでは対応に限界があり、管理組合、地域、行政の協力・連携が必要になってくることでしょう。
    高齢者世帯はどのような状態で、いかなる助けが必要なのか―高齢者は公助を受けながら、地域の「お互い様の助け合い」である共助がどんどん必要になってくると考えられます。

  6.  マンションにおける認知症の事例と対応策 全国約370社の管理会社を構成会員とする一般社団法人マンション管理業協会が会員向けに作成・配布している認知症高齢居住者への対応をまとめた手引書を、「ダイジェスト版」として一般向けに販売を開始した。
     玄関ドアの鍵を所持していながら鍵を開けられない、管理会社の防災センターに週1回の頻度で「泥棒が入った」という連絡が来るなどの事例をもとに、認知症とマンション管理の関係等を掲載している。 認知症や介護の問題は管理会社に任せておけばよい、というものではない。管理組合としてどう向き合うのかを考える上で、最初に手に取りやすい一冊といえる。

    ◆編集・発行/一般社団法人マンション管理業協会
    A4判・84ページ
    定価/800円
    2016年12月1日発売
    本書の販売・問い合わせ
    TEL 03-3500-2721

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